
– Exhibition Information –
瞬き(MABATAKI)
Waku Fukui, Taito Itateyama
若手作家の表現拠点〈後光〉が6月18日(水)〜6月22日(日)の会期で、神宮前にあるギャラリーTHE PLUGにて、Waku FukuiとTaito Itateyamaによる二人展「瞬き(MABATAKI)」を開催する。
2024年に設立された後光(Gokou)は、ギャラリーでありながら住所は非公開とされ、展覧会へのアクセスはInstagramのDMを通じてのみ行われてきた。情報は断片的にしか発信されず 、展示の告知も、作家のプロフィールも、整えられた言葉で語られることはほとんどない。後光は、自分達の意識の拡張のための場所として、自らの感覚や衝動のままに在ることを許容する、新しく生まれた東京のユースカルチャーの担い手の表現の実験場となっている。
本展「瞬き(MABATAKI)」は、後光を主宰するWaku Fukuiと、昨年12月に個展を開催したTaito Itateyamaによる初の外部展示となる。二人に共通するのは、現代を生きることでありながら、今を生きることが前景化したかたちとして、光を扱うという点にある。会場では、煙で満たされた空間のなかに、Wakuによるネオンの光の作品と、Taitoが写真集をめくるという行為から着想を得たライトパネル作品。二人の共作による回転式スライド映写機で投影される光の像、Wakuによるネオンの光の彫刻が展示される。
本展は、THE PLUGの協力によって開催される後光にとって初の外部展示となるが、これまでと同様に、あらかじめ整えられたコンセプトや構成に依らず 、作家個々の動機や関係性に応じてかたちづくられている。その場でしか出会えない、一瞬の感覚との交差に、ぜひ立ち会っていただきたい。
Wakuは「ただの光、そこに在ること」が好きだと語る。彼の作品においてネオンは、もはや都市の記号や商業的な看板としての情報伝達手段ではなく、それ自体が知覚を揺さぶる存在として、静かに空間に介在している。 近年取り組んでいる「記号からの逸脱」や「素材としての光の解放」は、突き詰めれば、光のエフェメラル(儚さ)への実践に終始していると言えるだろう。街中のネオンは一見、連続した線のように見えるが、実際には高速で点滅する光の粒子の連なりによって構成されている。その断続的な明滅にこそ、永続しないことから生まれる美しさや、感覚の鋭さが宿っている。この、かたちを作ると同時に消えていく光に惹かれる感性は、Waku自身の記憶とも深く結びついている。仏教寺院の家系に育ち、幼少期にロウソクの炎や本堂に射す金色の光を見つめて過ごした彼にとって、光とは視覚的な現象にとどまらず 、祈りや時間、記憶の媒介でもあった。そうした記憶に裏打ちされた彼の作品は、再現や記録では捉えきれない「今・ここ」においてのみ立ち上がる感覚を手渡そうとするように、空間のなかに浮かび上がっている。
Taito Itateyamaは、Taito Waveの名で国内外で活動し、自らの写真を「今の自分自身が人間とどう関係を持ったかのセルフポートレイト」だと語る。その写真には、目の前で起きた出来事だけでなく、写された人物との関係性や共有された時間・感情といった、生の痕跡が宿っている。そこには、カメラを介して見つめる他者が、そのまま自己の一部として溶け込むような、ドキュメンタリーと日本独自の私写真との揺らぎを感じさせる。が、その人間の実人生の延長であり、日常的な交わりのなかでしか立ち上がらない生々しさの証明だ。写真集という形式こそ、そのリアリティが凝縮されており、展示空間よりもむしろページをめくる行為の中に彼の写真の本質が宿っていると考えている。本展では、ネオンという人工の光を用いて、現実と非現実のあわいにある空間を撮影する。かつて訪れた富士の樹海を再訪し、ネオン光だけでその空間を撮るという試みは、写真における「光の意味」の再定義でもある。カメラは光なしには像を結ばない。ネオンという存在自体が、写真という行為を成立させる光源として働いている。Taito Itateyamaは言う、「俺が求めているのは、ネオンの良さを非現実的なものとして扱うのではなく、現実と非現実のあいだにあるものとして感じること」。その態度は、Wakuが「ただの光、そこに在ること」に惹かれる感性とどこか通底している。二人が扱う「光」は、どちらも今この瞬間を照らすためにあり、それは見る者自身の〈存在の輪郭〉を際立たせる。彼らの展示は、今という時間と感覚のなかでしか現れない「まばたき」のような一瞬の出現を、見る者の内側にそっと刻み込むはずだ。
◆◆ Exhibition Information ◆◆
「瞬き(MABATAKI)」
Waku Fukui × Taito Itateyama
@THE PLUG
2025.6.18 Wed – 6.22 Sun
Open : 13:00 – 19:00
キュラトリアル・サポート / 企画協力:Rintaro Yamamoto
題字:Joe Takayamada
– Opening Reception –
2025.6.18 Wed
15:00– 17:00(招待&プレス関係者向け
18:00 – 21:00(一般来場者)
◆ Venue
THE PLUG | ザ・プラグ
原宿にあるレンタルイベント・展覧会スペース。
住所 : 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-12-9
営業時間:展覧会中のみ開廊。
入場料 : 展覧会・イベントによって異なる。
Instagram : @theplug_space
◆ Artist Biography
Waku Fukui | 福井 和来
1996年、東京生まれ。ネオンの光が持つ空間性、物質性、そして意識への作用に着目し、鑑賞体験を通じて作品との新たな関係性を築くことを主軸に制作を行っている。2017年、ネオン管に関心を持ち、国内有数の工房「島田ネオン」にて技術の修得を始める。その後、さらなる探究のため渡米し、ニューヨークに滞在。帰国後、ネオンサインスタジオ「Gokou Neon Studio」を立ち上げ、2024年にはアーティストランスペース「後光」を設立した。
Instagram : @waku0134
Taito Itateyama | 猪立山 泰人
1996年生まれ。私写真を中心に、自身のドキュメンタリーを生涯を通して写真集で残す活動を行う。2023年8月、初個展「ドラマティックトウキョウ」をsalt and pepperで開催し、同時に写真集を出版。2024年12月には、個展「FACE TO FACE」を後光にて開催。
Instagram : @taitowave