Interview
松本アタル
Text, Photo, Edit : Seira Kimura
東京を拠点に活動するバンド、ハシリコミーズのボーカルとして躍進し続ける松本アタル。ビームス池袋を初めとし様々な場所で絵の展示を行い、アーティストとしての一面も持つ彼のアートに対する極意とは一体どんなものなのか。そして、彼自身のアートと音楽の共通点とは。
ー今回BEAMS池袋で展示をすることになった経緯を教えてください。
飯田橋にRoleというギャラリーがあるんですけど、そこのキュレーターの藤木さんという方が音楽が好きで、僕たちのライブを見に来てくれたんです。その後、藤木さんからバンドの個展をやってほしいとお誘いをいただいて。当初はバンドの写真や映像を流す予定だったみたいなんですけど、僕はギャラリーでの展示だから”絵を描かなきゃいけない”って認識で勝手にいて。笑 それで、沢山絵を描いていったら、それを気に入ってくれたんです。藤木さんは、当時BEAMS池袋店リニューアルの展示レイアウトを担当していて、ラッキーなことにそのタイミングで僕の絵を展示してほしいとお声掛けしてもらったんです。
ーそうだったんですね、初めはバンド自体の個展があって、それが今回の展示をするきっかけに繋がってたんですね。
そうなんです!
ー本展に展示されているチュー絵を描き始めたのは小学生の頃からだとお聞きしましたが、描き始めたきっかけはなんですか?
小学生の時から勉強が嫌で、授業中に暇でノートに落書きをしてたのがきっかけですね。自分がササっと描ける絵ってあると思うんですけど、これがそうなんですよね。
ー目を瞑っていても描ける絵だと言っていましたよね。笑
そう、だから小学生の頃とか皆の前で黒板にこの絵を目を瞑りながら描いて「凄!」って言われるみたいな。笑 でも、それで描きすぎて「もうやめて」って言われたり。笑
ーお馴染みのって感じだったんですね。笑
だいぶ良く言えば…。笑
ーこのモチーフを今でもずっと描き続けている理由はありますか?
元々絵を描くこと自体好きだったんですけど、東日本大震災の時におばあちゃんと暮らす期間が一年くらいあって、当時スマホとかも持っていなかったから凄く暇でよく絵を描いていたんです。結構ちゃんとした水彩画とかの絵を描いていて。でも、高校生になってからはちゃんと絵を描ける時間がだんだん無くなってきてしまって。その中でも定期的に絵を描き続けるために、どんな状況でもすぐに描けるようなあの絵をずっと描き続けていたんです。だから、特別この絵に愛があるって訳ではなくて。笑
ーなるほど。思い入れがあるというよりかは、時間がない中でも、アタルさんがいつでも気軽に描けるものだったからなんですね。
そうなんです、深い意味は無くて。あと、自分が知ってる限り、アーティストさんで”チューしてる絵”を定番化してる人はまだいない気がするので。いたらパクリになっちゃうかもですけど、まだ大丈夫かなって。笑
ーご自身のバンド”ハシリコミーズ”のアートワークもアタルさんが多く担当していると思うのですが、自身の音楽とアートを制作するうえで、それぞれに共通することはありますか?
どちらにおいても、下手くそでも自分らしさを出すことに重きを置きたいと思っていて。例えば、4人集まって、誰が聴いてもいいと思えるようなジャズバンドをやることだってできるじゃないですか。それで、演奏が上手くなったら聴いてる側にとっても、凄く心地がいいと思うし。クオリティを上げるってことは、絵に置き換えても、とても大事なことだと思うんです。でも、ササっと描いた絵でも、作った音楽でも、そっちのほうが衝撃が大きかったりすることもあって。だから、音楽でも絵でも、技術の高さよりもその人らしさがより現れるものを作れるようにしたいなと思ってます。
ー音楽ではアタルさんの実体験や感情を元に生まれたものが多いイメージですが、絵を制作するうえでは自分が影響を受けているものや、作品に反映されるものはありますか?
好きな絵とかはありますけど、そこから影響されたものを描いたり、自分の感情を絵に表したりすることは全然なくて、それは音楽のほうでやりがちです。絵は本当になんにも考えてない時とかに描いてるというか、それくらい自分にとってラフなものかもしれないです。
ーでは、今後アートの面で挑戦してみたいことはなんですか?
めっちゃデカい絵を描きたいなって思ってます。笑 でもMVで使ったようなお花とかの絵みたいに抽象的な絵じゃなくて、もっと”具体的な絵”を描いてみたいなって。
ー”具体的な絵”、ですか?
なんだろう、お花は誰にでも描けるけど、もうちょっと僕が描いたってことがわかりやすいものを描きたいです。なんか色々と挑戦したいことはあるんですけど…。
ー前にライブペインティングもしてましたよね?
してましたね。笑 全然深いこと考えてなくて、その時やりたいことや興味持ったことを、”やんなきゃ”ってなって。絵とかでも、結構賛否が分かれるものに興味が出ちゃうというか。
ーそうなんですね。さっきアタルさんが言ってたことに通ずると思うんですけど、現代美術は西洋美術とかに比べて、技術とかよりもオリジナリティ、”その人らしさ”みたいなものが重要視されてる部分はありますよね。
固定概念に捉われない形式だから、面白いというか。それがアートなのかどうなのかっていう厳しい意見もあると思うんですけど、すごく面白いですよね。実は前にイタリアに行った時に、見るもん見ようと思ってお金をはたいて沢山美術館に行ったんです。こんなん言ったらアレかもしれないですけど、2時間ぐらい宗教画ばっかり見続けてたら、ううん…となってしまって。笑 スゴ!とも思うんですけど、その絵だけのブースだと、現代美術を知ってしまった今は、すっごい退屈に感じてしまったんですよね。勿論その絵には、そういった背景があって、とても価値のあるものだとも思うから、そういうのを目の前にすると技術を置き去りにしたり、甘えたことはできないな、とも思います。笑
ーたしかに。笑 技術あって損はないんだろうな、とも思いますしね。最後に本展の見どころや、読者に向けてメッセージをお願いします。
なんだろう…適当に見てくれたらいいです、6枚あるので。笑 適当に、服見るついでに、フラッと是非見てください!笑
◆ Biography
Ataru Matsumoto | 松本アタル
東京を拠点に活動するバンド、ハシリコミーズのギターボーカル。バンドの他、自身のバンドのアートワークや絵の展示なども行い、幅広く活動している。
Instagram : @europeansexy