
– EXHIBITION INFORMATION –
Field
Taichi Watanabe
このたび i GALLERY OSAKA では、アーティスト・渡邉太地による個展「Field」を開催いたします。
渡邉はこれまで、“どこでも窓”という独自の視点から、絵画を通じて現実と想像の境界、内と外、自己と他者のあいだにある曖昧さを追い続けてきました。本展ではその探求をさらに推し進め、彼にとっての「特別な領域=フィールド」としての絵画空間を提示します。
10 代の頃、サッカーフィールドは彼にとって神聖な空間でした。そこには確かなルールと自由、物語と祈りが混在しており、
現実とは異なる感覚の中で自身が存在していたと言います。そして現在、絵の在るところに現れます。今回の展示では、会場の入り口付近の足元からすでに作品が始まっています。あえて地面に置かれた絵画たちは、これまでにない表現であり、空間の導線に沿って、絵画の立ち上がる気配が少しずつ立体的に明らかになっていきます。
ギャラリーに足を踏み入れた瞬間から奥の展示空間に至るまで、途切れることなく続くその配置は、鑑賞者の身体そのものを作品の一部として取り込み、歩くこと、立ち止まること、視線を落とすことのすべてに静かな緊張感を生み出します。その構成は、まるで白砂の上に据えられた石の間をたどるようでもあり、日本の枯山水に通じる “見立て” や “間(ま)”の美学を想起させます。
何もないように見える空間にこそ、見るべきものがある ― そんな意識が自然と芽生えていくようです。絵画そのものもまた、静かな色面の重なりの中に深い呼吸を宿し、視覚の奥に潜む感覚をゆっくりと呼び起こします。抽象的でありながら、ひとつひとつの形や位置に、偶然を排した確かな意図が貫かれており、それらは空間に対しても繊細に応答しています。
ぜひ会場にて、渡邉太地が創り出す “Field” を、五感とともに体験していただければ幸いです。

10 代の私には特別な領域と呼びたい空間があった。それはサッカーフィールドだった。白い線で囲われた約 100m × 70m の空間に踏み込むことは、とても特別なことであった。そこには神様がいると言われ、多くの人々を楽しませることや、悲しませたりするなど数多くの物語が生み出されてきた。
また、フィールドに描かれた白線は現実世界との境界線のようでもあり、私にとっての特別な領域を作り出していた。現在の私にとって、その特別な領域は絵がある空間だ。フィールドの白線が持つ目的以上の存在のように、Space(絵の世界)を創り出すという可能性を持った絵の在り方は類似していると感じる。
このギャラリーに足を踏み入れることは私が創り出す Fieldへ入ることであり、ギャラリーに飾られた絵を鑑賞するにとどまらない体験を感じて頂ければ幸いです。是非ご覧ください。
ー 渡邉太地
◆◆ Exhibition Information ◆◆
「 Field 」
Taichi Watanabe
@i GALLERY OSAKA
2025.5.23 Fri – 6.23 Fri
Open : 12:00 – 19:00
Close : Every Tuesday
◆ Venue
i GALLERY OSAKA | アイ ギャラリーオオサカ
“i GALLERY OSAKA(アイ ギャラリー大阪)”は、せんば⼼斎橋筋商店街内の現代アートギャラリーです。「船場」として知られるこの街は、⼤坂城築城のため⼤坂城下に開発され、商⼈の街としても⼤変歴史があります。i GALLERY OSAKAは、ストリートカルチャーを起源としたアーバン/ロウブロウ/ポップアート/写真など幅広いアートを発信していきます。商店街の中にある真新しいビルから⽣まれる異空間スペースの内装の設計は、関祐介⽒が担当しました。伽藍とした空間に異物を造り込み、ストリートの経年劣化・変化をも楽しむことがコンセプトです。ロゴデザインは、ストリートのカルチャーにも精通するアーティストEric Elms⽒が担当しました。コンセプトとして“コンテナ”がテーマになっております。ギャラリーというのは本来、展⽰の内容や訪れる⼈達で形が変わってくると考えています。特にこのギャラリーの具体的なデザインは、作品を展示するスペースの中で、独立した形が設計されています。i GALLERY OSAKAの(i)が中央のコンテナとし、{}と[]を組み合わせ、2 つのコンテナのシンボルを使うことで、他のさまざまな情報を含むモジュールシステムを表現しています。アクセスは心斎橋駅より徒歩5分。
住所 : 〒542-0081 大阪府大阪市中央区南船場 3-8-14 ACN 心斎橋 Garden 1F
営業時間:12:00 – 19:00 / 毎週火曜定休
入場料 : 無料
Instagram : @igallery_osaka
◆ Artist Profile
Taichi Watanabe | 渡邉太地
1997 年、東京生まれ。東京藝術大学大学院絵画科油画専攻卒業。「どこでも窓」をテーマとした油画作品を制作。窓という枠組み、その先に映る空間が創り出す新たな絵画表現を追求している。また自身の表現をキャンバス上に限らず、シルクスクリーンを用いた T シャツの製作やテキスタイルのデザインなども手掛ける。
Instagram : @1899_tw