
– Exhibition Information –
制作の定理、ペインティングの真円
大﨑土夢
アーティスト 大﨑土夢による個展『制作の定理、ペインティングの真円』Gallery Commonにて開催。同作家にとって、Gallery Commonで初の個展となる本展は、作家が長年にわたり探求してきた「絵についての絵」をユーモアと構造の両側面から表現する新作群が紹介される。
以下文面、Gallery Commonオフィシャルプレスリリースより。
絵画のルールの内側と外側で
大﨑土夢は1984年福岡生まれ、現在は東京と福岡を拠点に制作を行なっている。大﨑は、絵画における「当たり前」の手順や構成をあえて逸脱し、常に「絵画とは何か」を問い続けてきました。背景より先に描かれる前景。効率を反転させる筆の順序。まるで散布されるように複数のモチーフが散在しながらも画面上で共存する構成を大﨑は「散布考」と呼び、それはまるで音楽でいうところのフーガ——主題が反復・変奏・重なり合う構造——に近いものです。大作に臨む前は、あえて入念に小下図を制作するステップを踏むなど、絵画のルールの「内側」と「外側」を行きつ戻りつ制作された画面には、どこか軽やかささえ漂います。

《交通事故シリーズ》と呼ばれる作品の中には、運命を司るギリシア神話の女神クロートー*と、高速道路で事故によって大破した車両というまったく対照的なイメージが同一画面上に描かれ、「安定と不安定」という相反する概念がせめぎ合う空間が立ち現れます。ここに、クロソイド曲線という物理のグラフが浮き上がるように描かれているのも見逃せません。クロソイド曲線は、世界中の高速道路のカーブ設計に採用されており、その語源はクロートーに由来するとされています。
瞑想と物理と絵画制作
遥かかなたの宇宙の法則・現象を引き出しとしてさまざま応用してきた物理の歩みに対し、内なる観察から真理に迫ろうとする瞑想。そして、感覚と構造の両側からアプローチする絵画。それぞれ異なる道筋を辿りながらも、これらは大﨑の中で三角形のような関係性を結んでいます。また大﨑は、自らの「制作」という行為は作品を「残す」という意味においてある種の「永遠」を信じる行為であるとも語ります。その一方で、瞑想で説かれる「無常」の感覚には、深く揺さぶられるものがあったともいいます。その「ずれ」こそが、今回の作品にも影響を与えています。
遥かかなたの宇宙の法則・現象を引き出しとしてさまざま応用してきた物理の歩みに対し、内なる観察から真理に迫ろうとする瞑想。そして、感覚と構造の両側からアプローチする絵画。それぞれ異なる道筋を辿りながらも、これらは大﨑の中で三角形のような関係性を結んでいます。また大﨑は、自らの「制作」という行為は作品を「残す」という意味においてある種の「永遠」を信じる行為であるとも語ります。その一方で、瞑想で説かれる「無常」の感覚には、深く揺さぶられるものがあったともいいます。その「ずれ」こそが、今回の作品にも影響を与えています。

郷土の作家に親しみながら育った幼少期
大﨑は青木繁、古賀春江、坂本繁二郎、立石大河亞といった郷土福岡を拠点に活躍した先人の画家たちの作品に親しみながら育ちました。青木繁の《海の幸》(1904年)は、幼少期に通った劇場の緞帳の柄として織られ、繰り返し目にするうちに、自然と記憶に刻まれていきました。青木の旧宅もまた、大﨑の自宅からほど近い場所にあったといいます。「散布考」という構成には、古賀春江の画面に見られるさまざまな要素の絶妙な配列や、立石大河亞のような入れ子構造にも通じるものがあります。彼らが示した、貪欲に面白いものを取り入れる柔軟さを大﨑は深く敬愛しており、そうした作品に自然に触れられる環境——地方にありながら、美術館(久留米市美術館〈旧・石橋美術館〉)との距離が近かったこと——は、今日の制作に大きな影響を与えていると語ります。
絵を「描くこと」そのものが主題となる、大﨑による精緻かつ遊び心あるペインティングの世界をぜひご高覧いただけますと幸いです。
*クロートーもしくはクローソーは、ギリシア神話における「運命の三女神」こと「モイライ」の一柱で、長姉とされる。その名は、「紡ぐ者」を意味する。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC
◆◆ Exhibition Information ◆◆
「制作の定理、ペインティングの真円」
大﨑土夢
@Gallery Common
2025.6.7 Sat – 7.6 Sun
Open : 12:00 – 19:00
Close : Monday and Tuesday
◆ Venue
Gallery Common | ギャラリーコモン
2010年にen one tokyo, inc.によって設立され、現在共同設立者の新井暁がディレクターを務めるGallery Commonは、原宿のストリートカルチャーを背景に国内外のアーティストやトレンドセッターがローカルシーンと交流するための親密なスペースとして誕生しました。原宿の独特なエネルギーを育むため、原宿の中心部にギャラリーがあまりない頃から、アートを中心とした空間を同地に作り上げることの重要性を感じ、Gallery Commonはオープンしました。クリエイティブ・エージェンシーという異色の背景を元に、ファッションとアート、ストリートとコマーシャル、サブカルチャーとメインストリームという逆説的でありながらも互いに共生的な二者間のギャップを埋めることを目指しています。今後も様々な国や分野にわたる著名または将来有望な現代アーティストと仕事をともにする傍ら、国内外のアートフェアやコラボレーションプロジェクトに参加していきます。
住所 : 〒150-0001東京都渋谷区神宮前5-39-6 B1F
営業時間:12:00 – 19:00 / 毎週月曜・火曜定休、展覧会の無い日は休廊
入場料 : 無料
Instagram : @gallerycommon
◆ Artist Biography
大﨑土夢 | Tomu Osaki
1984年福岡県生まれ、東京と福岡を拠点に活動。同時多発的に湧き上がる相反する感情や状況を、多様な技法、色彩、形で連鎖的に画面に同居させ、絵画表現の可能性を追求している。主な個展に、「Colorless green ideas sleep furiously」AIR motomoto (熊本、2024)、「8の儀式と8人の王子」Marugo deli Ojigadake (岡山、2024)、グループ展に、「Eudaemonia」Gallery Common (東京、2024)、「ANB Open Studio vol.7『プ(ブ)ラ(ネ)ズ(グ,フ,ウ)マ(ー)』」ANB Tokyo (東京、2022)、「サテライト^サテライト」HOTEL ANTEROOM KYOTO (京都、2022)、「Fwd:Good Night Image」BnA Alter Museum (京都、2020)などがある。
Instagram : @tomu.osaki