
– EXHIBITION INFORMATION –
Fault Lines
Ichi Tashiro / Minh Lan Tran / Rose Salane
Gallery Commonにて、イチ・タシロがアーティスト兼キュレーターとして初めて企画する、イチ・タシロ、ミン・ラン・トラン、ローズ・サレーヌの3人によるグループ展「Fault Lines」が9月7日(日)開催される。
以下文面、Gallery Commonから。
「断層線」を意味する「Fault Lines」というタイトルは、地球の内側を露呈させる地質学的な亀裂だけでなく、文化、技術、感情における比喩的な亀裂を想起させます。層、亀裂、開口部といったテーマに向き合うアーティストたちは、表層の下の構造に隠されている物質的な、あるいは文化的な記憶や歴史的出来事の余波に応答するものを探求しています。

イチ・タシロは、均された表層の上に実験的な素材と重層化、そして加算・減算による相互作用を適用することによって作品を制作するアーティストです。最新の作品では重ね合わされたキャンバスの層に彫刻を施し、燃焼させることで制作を行っています。その変容的プロセスは切断や燃焼という行為を癒しの動作に変換し、能動的な瞑想、そして自身の内側と外側の双方を探求する行為として機能します。国際的に活動しているタシロは、近年ではGallery Common(東京)やバーゼル香港などで展示しています。

ミン・ラン・トランは香港生まれ、パリ在住で、絵画、書、パフォーマンスをその多様な実践に統合していきます。本展でトランは日本での滞在中に調達した印刷物、布地、顔料、インク、木材などの素材を用いて、環境、文化的風土、集合的記憶の痕跡に応答するミクストメディア作品シリーズを制作しており、その作品は身体性、抵抗、言語への探求を押し広げています。トランは、Jan Kaps(ケルン)、Francis Irv(ニューヨーク)、Balice Hertling(パリ)などで作品を発表しています。

蘇る消し去れぬ記憶. 2025. Found computer keyboard pieces on mat, wood frame. 814 × 1118 x 550 mm (framed).
ニューヨークを拠点とするローズ・サレーヌは、記憶、価値、交換の物語を語る品々のコレクションである「ダイナミック・セット」を扱っています。サレーヌの新作もまたこの土地の歴史や素材に反応し、個人的な物語と集合的記憶の入り組んだ関係を明らかにしています。本展では、テクノロジーと人間の記憶、感情の相互作用を探求し、日本の文化的・経済的歴史の中心であるテクノロジーとメディアの関係を記録しています。サレーヌの作品は、ニュー・ミュージアム・トリエンナーレ(ニューヨーク、2021年)、ホイットニー・ビエンナーレ(ニューヨーク、2022年)、ウォーカー・アート・センター(ミネアポリス、2025年)で展示されています。
この3人のアーティストたちは共に、彼らが「Fault Lines(断層線)」と呼ぶもの、すなわち境界線であり同時に接点でもあるものを探求しています。彼らによって触れられ、砕かれ、あるいは崩された表層から露わにされたものは何なのか、その思索へと私たちは誘われるのです。
◆◆ Exhibition Information ◆◆
「 Fault Lines 」
Ichi Tashiro / Minh Lan Tran / Rose Salane
@Gallery Common
2025.8.8 Thu – 9.7 Sun
Open : 12:00 – 19:00
Close : Monday and Tuesday
◆ Venue
Gallery Common | ギャラリーコモン
2010年にen one tokyo, inc.によって設立され、現在共同設立者の新井暁がディレクターを務めるGallery Commonは、原宿のストリートカルチャーを背景に国内外のアーティストやトレンドセッターがローカルシーンと交流するための親密なスペースとして誕生しました。原宿の独特なエネルギーを育むため、原宿の中心部にギャラリーがあまりない頃から、アートを中心とした空間を同地に作り上げることの重要性を感じ、Gallery Commonはオープンしました。クリエイティブ・エージェンシーという異色の背景を元に、ファッションとアート、ストリートとコマーシャル、サブカルチャーとメインストリームという逆説的でありながらも互いに共生的な二者間のギャップを埋めることを目指しています。今後も様々な国や分野にわたる著名または将来有望な現代アーティストと仕事をともにする傍ら、国内外のアートフェアやコラボレーションプロジェクトに参加していきます。
住所 : 〒150-0001東京都渋谷区神宮前5-39-6 B1F
営業時間:12:00 – 19:00 / 毎週月曜・火曜定休、展覧会の無い日は休廊
入場料 : 無料
Instagram : @gallerycommon
◆ Artist Biography
イチ タシロ | Ichi Tashiro
1984年、愛媛県生まれ。イチ・タシロは、均された表層の上に実験的な素材と重層化、そして加算・減算による相互作用を適用することによって作品を制作する。専門的な美術教育を受けておらず、完全に独学なタシロの制作アプローチは、動作、本能、そして素材と道具の特性に対する直感的反応に基づいている。まるで即興演奏のようにオートマティスムと即時性の文法の中で制作された彼の作品は、それぞれの要素がその様式的進化に寄与している。初期のコラージュ作品では、新聞、書籍、雑誌からのテキストや画像の断片によって空想的で超現実的なナラティブを想起させるテクスチャーのあるコンポジションを形成していたが、やがてその焦点を表層そのものの物質性、特に二次元と三次元の平面間の相互作用へと移行。彫刻とパターン描画の探求を通じて木材の表層に彫りや削り込みを施し、紙、顔料、インク、そしてファウンドオブジェクトを重ねることで彫刻とコラージュを融合させた抽象的な色彩と形を構成していた。最近では、油絵具を塗った木製パネルの上に複数の層のキャンバスを張ることで構成された作品に取り組む。その表層は下に隠された層と色を露呈させるために彫り込まれ、さらに顔料、絵具、火によって形を変えられていく。彫刻行為から燃焼までの一連のプロセスは一見破壊的であるようにも見えるが、その実、絵具以外のメディアで深さ、色彩、テクスチャーを生み出している変容の行為であるといえる。タシロにとって切断と燃焼のプロセスは癒しや浄化の行為であり、彼自身と作品の間に身体的な関係を築いていくことである。それが切り傷や痣といった意図していなかったものであるか、あるいはタトゥーやスカリフィケーションのような意図されたものであるかどうかにかかわらず、生きることによって身体や皮膚にはその痕跡が残されていくように、タシロの作品は身体的そして精神的な形を持った癒しの表現として見ることができる。定住する国を持たず、自由な探索の時間と集中的な創作の時間を行き来するタシロの生き方は彼の活動のリズムと深みを形成し、特に集中的な制作段階はタシロが自身を深く見詰め直すための時間となっている。しばしばその制作は反復的で本能的な動きによって進められ、意識的な思考と無意識的な思考、そしてその放浪の時間によって吸収したイメージや刺激へとアクセスしていく。こうしたプロセスによって生まれる作品は、能動的な瞑想行為として、また自己の内側と外側の双方の探求として機能する。それは多層的でかつ露出した表層を持つという作品物理的な構造にだけでなく、内省的に自身に目を向けていくアイデンティティの解剖としても反映されており、隠されたものと露呈されたものの間の緊張関係を映し出す。タシロは香港、パリ、ニューヨーク、ロサンゼルス、アムステルダム、ベルギー、デンマーク、シンガポール、東京での個展およびグループ展にて作品を展示。また、アートバーゼル香港やASIA Now Parisなどの国際的なアートフェアにも参加している。
Instagram : @ichi_tashiro_
ミン・ラン・トラン | Minh Lan Tran
1997年、香港生まれ。ミン・ラン・トランは、言語、動作、物質の間に生じる相互作用および抵抗を探求し、絵画、書、パフォーマンスと多岐に渡って作品を制作するアーティスト。カリグラフィーから始まった文字による作品は、彼女の作品制作における重要な基盤を形成している。また、コレオグラフィーの原理を取り入れているトランは、異なる強度による表現を的確に配置していくことで、身体の流動性を具現化したような構成を生み出す。多様な伝統と歴史に根ざしたトランの作品は社会不安というテーマに向き合い、抗議のための焼身をも含むプロテストの精神的・政治的表現を伝えており、これらの要素を融合させつつ、表象よりも身体性をより重要なものとする。トランはニューヨークのFrancis Irv、ソウルのHigh Art、ロサンゼルスのFrançois Ghebaly、パリのBalice Hertling、ベルリンのHouse、ロンドンのSadie Coles HQ、ロンドンのミュージアム・オブ・ザ・ホーム、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートなどで展示を行っている。パリのエコール・デュ・ルーブルとオックスフォード大学で美術史を学び、コートールド美術研究所(ロンドン、2020年)でビザンチン研究と視覚神学の修士号を、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン、2023年)で絵画の修士号を取得している。
Instagram : @minhlan.tran
ローズ・サレーヌ | Rose Salane
1992年、アメリカ生まれ。ニューヨーク拠点ローズ・サレーヌは、個人やオークション、団体などがかつて所有していた品々を「ダイナミック・セット」と呼び、その作品によって価値と交換の複雑さ、個人的な愛着、記憶と喪失の感情といった都市生活を形作るものを考察する。そうした品々の蓄積からなる彼女のインスタレーションでは、個人、場所、そして集合的な生活経験の間に生じる関係がその保存を保証した力によってどのように物語られるかが検証される。これらの品々の蓄積を広範に調査、分析、分類することで、個人的な物語と私たちの日常経験を形作る制度的構造との間にある痛切な繋がりを明らかにしている。サレーヌは、ニューヨーク市立大学バーナード・アンド・アン・スピッツァー建築学校で都市計画の修士号を、クーパー・ユニオンで美術学士号を取得。主な個展に、上海のTANK(2024年)、ジョージア州アテネのアテネウム(2024年)、ニューヨーク州アナンデール・オン・ハドソンのヘッセル美術館(2021年)、マサチューセッツ州ケンブリッジのMITリスト・ヴィジュアル・アーツ・センター(2019年)、ロンドンのCarlos/Ishikawa(2018年、2023年)など。2021年にはニューヨークのニューミュージアム・トリエンナーレ「Soft Water Hard Stone」に、2022年には、ホイットニー美術館、ニューヨークのホイットニー・ビエンナーレ「Quiet as It’s Kept」に作品が展示されている。また、イタリア・ローマのヴィラ・メディチや、イタリア・ポンペイのポンペイ・コミットメント、アルケオロジー・マターズでのレジデンシャル・フェローシップに参加している。
Instagram : @that_prick_rose